比那子の思惑。

比那子は「呪い」によって何がしたかったのか。
そもそも、この映画はホラーと呼べるのだろうか。
わだかまりを解消するために原作を読んでみた。
「呪い」がモチーフだが比那子から怨念が感じられない。
比那子は探求者だったのだろう。
いじめに対するささやかな反抗を発端に「呪い」に興味を覚えた彼女は「呪い」の可能性を突き詰めていく。
理論的な観点で「呪い」を分析し自分なりの体系を構築しようと試みる。
そして、比那子の「呪い」は完成した。
ただ、彼女が生み出したものは「呪い」の範疇を超えていると思える。
魔道書と呼ばれる文献がある。
魔道書といえば魔術や呪術などの知識、奥義が書かれた書物を指すのだが、魔道書の中にはそれ自体に生命が宿ると云われている代物が存在する。
比那子が生み出したものは、まさにそれだったのだろう。
比那子はそれなりに由香のことを評価していたのだと思う。
比那子が由香に対してだけ饒舌になったのは彼女が「呪い」を認識し意見してきたからだ。
「呪い」は比那子にとって研究成果だった。
比那子は由香からの糾弾を自身の功績に対する賞賛のように聞いていたのかもしれない。
だから、比那子は由香に賭けることにした。
「呪い」を記したメールを由香にあえて送り「呪い」の解除方法を研究してみたらと持ちかけることで彼女に最後の仕上げを託したのだ。
そして、由香は比那子の思惑通り行動した。
彼女の助力によって黒羽比那子という名の魔道書が胎動を始めたのだ。
余談。
「呪い」が生み出される過程を記した黒羽比那子の章よりも、「呪い」が蔓延した後の章「浦野祐子の手紙」の方がきつい。
読んでいて気分が悪くなった。(汗