憑き物落し
トイレットペーパー。
自分はこれが何故か気にいりませんでした、亜弥さんらしくないと思えたからです。
自分に亜弥さんの日常がわかるハズもないからそんなのわからないのにね。
でも、とても大切な何かが隠れている気がしたのです。
亜弥さんが日用品を持っている写真に違和感を感じたのは、彼女のそういった姿を見た事がなかったからです。
アイドルと自分の日常をベツモノと無意識に定義してしまったからですね。
それに気づいた時に自分の中で何かが弾けました。
亜弥さんが世に出るまでアイドルという言葉は死語でした。
彼女はそれを復活させてしまいました。
たった一人で。
アイドルって何だろう…。
アイドルは人形。
アイドルは清楚でなければならない、穢れてはいけない。
何故穢れてはならないの?
アイドルは天使、もしくは神だから。
アイドル=偶像崇拝。
アイドルは恋愛をしてはいけない。
アイドルに恋愛は禁忌だけど、
歌手だったなら恋愛は許されるのかなあ。
私は歌手です。
みんなは私をアイドルと呼びます。
でも、私は自分の事を歌手だと思っています。
綺麗になりたいし、
おいしい御菓子も食べたいし、
旅行にも行きたいし、
映画にも行きたいし、
長電話もしたいし、
メールもしたい。
アイドルって少しも特別じゃないよ。
普通の女の子と何も変わらないじゃん。
だから、普通の女の子のように恋愛したい。
亜弥さんはね、自分は普通の女の子なんだっていう事実をトイレットペーパーによって世間に知らしめたのです。
そして自分が蘇らせたアイドルという概念を再び封じてみせたのだと思います。
亜弥さんは、私の憑き物を落してくれました。
知らない間に自分にとり憑いていたアイドルという概念を払拭してくれました。
アイドルなんて実体のないものに自分はずっと縛られていたのですね。
余計な概念がなくなれば、亜弥さんの行動に何の不思議があるでしょうか。
お互いの家に通うなんて普通の彼氏彼女なら当たり前の事ですものね。
僅かの逢瀬を楽しむ二人の姿は微笑ましく感じられます。
これから彼女をアイドルと呼ぶひとはいなくなっていくのではないのでしょうか。
アイドルという概念はもう亜弥さんにはそぐわなくなりましたから。
…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・
自分の閃きをどう表現しようか悩みました。
亜弥さんを神格化するというのも考えましたがしっくりこなかったです。
一日考えて推理作家の京極夏彦氏の手法「憑き物落し」に準える事を思いつきました。
思えば、なっちさんの時に私のようにアイドルという概念の無意味さに気づいた方がおられたかもしれません。
謝罪会見で姿を見せた彼女はアイドルなどではなく懸命に自分の想いを語る普通の女の子でしたものね。
うまく伝わればいいのですが、依然”意味不明”なら困ったな、申し訳。w