プレゼント


クリスマス・イブということで、聖なる日はやっぱ妄想かなっと。(何でや)
相変わらずの背中がこそばゆくなるようなショート・ストーリーなので、興味のない方はスルー願います。


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今日はクリスマス・イブ。
1Kの部屋に、一人用のコタツに、達磨ストーブ。
シャンパンと、小さなケーキと、一本立てたロウソク。


   「今年も彼氏できなかったナ、
    まぁわたしの人生なんてそんなもんよ、ドンマイ。」


少し笑ってみせる、でも、やっぱ切ない。


外は今年初めての雪が舞っている。
みんなは街に繰り出しているころだった。


   「わたしも行けばよかったかなあ。」


ちょっぴり後悔もしてみる。
でも、街の雑踏は苦手、苦しくなってくるから。
わたしにはこれが丁度いい。


好きなひと出来たんだよ、ほんとはね。
でも、言えなかった。
言えないうちに、彼は引越しちゃったから。


   「さ、ロウソクに火をともして、クリスマスしなきゃ。」


トゥルルル…。
ふいに電話が鳴った。


誰からだろ…
今日はクリスマスなので、わたしは不在ですよお。
と、そうも言ってられないので受話器を耳にあててみた。


   「加奈子ぉ、やってる?
    毎年恒例のひとりぼっちのクリスマスぅ。」


友達の今日子からだった。


   「はいはい、盛大にやっておりますよ。
    何なんですか、いったい。
    誘ったってわたしは行きませんからね、勝手に盛り上がっちゃってくださいな。」


   「そぅお、今ね、ここに文人クンいるんだけど。」


   「エ…。」


わたしの大好きだったひと。
引っ越したはずなのに、クリスマスだから戻ってきたのかなあ…。
今日子ったら、それならそうと言ってくれればいいのに。


   「今、かわるねっ。」


   「ちょ、ちょっと、いいよぉ…。」


いきなり代わられても何を話していいのか思いつかない。
胸の鼓動がどんどん早くなって、頭のなかが真っ白になっていく。


   「メリー・クリスマス。
    加奈ちゃん、元気だった?」


   「あ、あの、も、戻って来られたんですか。」


   「フフッ、戻ってないよ。
    今日子ちゃん、電話と電話をくっつけてくれているらしいんだ。
    加奈ちゃんが今年もひとりでクリスマスしてるから元気づけてあげてってさ。」


   「そ、そう…だったんですか。」


あんのやろぉ、妙な気の利かせ方しやがって、今度あったらとっちめてやるから。


   「加奈ちゃん、ボク、実は加奈ちゃんのこと好きだったんだ。」


   「エ…えええーっ。」


もうだめだ、何がなんだかわからない。
思考が完全にふっとんで、何がどうで、こうで…。


   「本当は話そうと思っていたんだけれど、
    急に引越しが決まっちゃったから言えなかった、言い訳だよね。
    でも、遠距離かもしれないけれど、付き合って欲しい。
    返事、今でなくてもいいから。」


   「は、は、はい、こちらこそ、よろしくお願いしますっ!」


涙が溢れてくる、うれしい。
わたしってば、いきなり、OKしちゃたよおおおーっ。


街頭の灯りが舞い落ちる雪のなかで鈍く輝いて見えます。
雪は少しずつ街を白く変え始めました。


今年はわたしのところにもサンタさんがやって来ました。
素晴らしいプレゼントを運んでくれました。