ひと足先に大河です。

今度の大河ドラマで真希さんが能子を演じます。(正しくは廊御方能子(ろうのおんかたよしこ)という姫です。)


彼女が演じる能子姫を想っていたら妄想の神が降臨しました。
時代物は初めてです。(時代考証が間違っている云々というツッコミはなしの方向で。w)
文章がカタイので興味のない方は軽くスルーして下さい。


…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・
能子は、清盛を父に常盤を母に生まれた姫である。
現在は時忠の妻、領子の世話役を務めている。
領子は源氏の血の混じった能子に常々辛くあたっていた。
能子は本日を期限に写本を任されていた、されどそれは一日でやりきれる量では到底なかった。


   「…子、能子。」


能子は誰かに呼ばれたような気がして顔を上げた。


   「いけない、わたし眠っちゃったみたい。早く仕上げないと領子様に叱られてしまう。」


作業を再開しようと机に向かおうとして、ふと誰かの気配に気づく。
明り取りに開けた襖の向こう、庭の中ほどに気配の主はいた。
狩衣を纏っている。
妖しいほどに色が白い美しいひとだった。


   「だれ?」
   「天狗とでもいっておく。」
   「あ…。」


能子は天狗と名乗る若者に心当たりがあった。
実際にその人物に逢ったことはなかったが母様がそのひとのことをいつも話してくれた。


   「兄様…。」


天狗は微笑むと黙って頷いた。


   「姫よ、御前は何故このような境遇に甘んじておるのだ、わたしには御前の姿が不憫でならぬ。
    兄と一緒に来てはくれぬだろうか。」


初めて逢えた兄だった。
母に聞かされた通りの凛々しく美しいひとだった。
領子の酷い仕打ちが思い出される、源を名乗ればそんな辛さも忘れることが出来る。
能子の心は揺れた、兄と行きたい衝動にかられた。


   「…。」
   「兄様、わたしは一緒には参れませぬ。」
   「能子っ。」


能子は笑ってみせた。


   「お心遣い嬉しゅうございます。
    されどわたしは清盛の娘、兄様とは敵同士です、どうして一緒に行くことが出来ましょう。」
   「御前はそれでよいのか。」
   「ひとが来る前に行ってくださいまし。」


兄は寂しそうに頷いた。
天狗は踵を返すと瞬時に闇の中へ姿を消した。


   「兄様…思っていた通りの方だった。」


能子の頬に雫が流れた。
止めどもなく涙が溢れてきた。
気持ちはもう二度と逢えないかもしれない兄の姿を追っていた。



…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・
平家に残る妹に義経は生き残る方法を授けたとか。
大河ではどんなふうに展開するのかなあ、真希さんの活躍が今から楽しみです。