はじめ

乙一という作家がいる。
まだ若いが、不思議で切ない話を書かせたら抜群だと思う。


正直言って彼の小説は読みたくない。
悲しくなるからだ。
それでも読んでしまう。
自分がそういう話を欲しているのだなあと感じる。


彼の作品に「はじめ」という物語がある。
単行本「石ノ目」に載っている。
(参考:http://www.shueisha.co.jp/otsuichi/top.html


何かやましい事をしてしまったとする。
自分がやったといえればいいのだがそれが言えない。
責任転嫁をするために「はじめ」という架空の人物を作り出し、
あたかも、その人物がやった事のように話す。
それを続けるうちに、架空の存在であったはずの「はじめ」が本当に現れ始める。
そういった物語だ。


本来なら怖い話に持っていってもいいところを作者はそうしない。
目の前に現れた「はじめ」は、自分がやった事にしてやりたいことをやればいい、
そう言うのだ。
「はじめ」という存在は、最後まで可哀想な役どころのまま消えていくのである。


もし、これが映像化されるのであれば、はじめ役は亜弥さんしかいないと思っている。
気丈に振る舞いながらどこか寂しげ。(ネタバレできないので雰囲気しか伝えられない)
この役をこなす彼女をぜひ観てみたいのだ。


ただ、原作に登場する人物たちはもっと年齢が若いので、その辺りは構成をやり直す必要があるが。