能子姫異聞


以前、真希さんが演じる能子姫を題材に物語を妄想したことがありました。
廊御方能子でググッてこちらを訪れる方も大河ドラマの放送が始まって以来増えています。
ご期待にそえているかは疑問ですが。w


懲りもせず、もう一度妄想してみたいと思います。
今回は、前回と全く違ったものにしてみました、伝奇風です。
興味のない方はスルー願います。


…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・


能子は尋常ならぬ寒さに目を覚ました。


   「この寒さ、一体どういうこと?」


布団から起き上がると辺りを見渡して愕然とする。


   「畳に霜が降りている…。」


今は皐月、しかも屋内に霜などありえないことだった。


能子はさらに異様なものを目にする。
彼女が今まで眠っていた枕もとの辺り、霜で真っ白になった畳の下から何かがせり出して来ようとしていた。


ズズ…。
異様な音とともにそれは少しずつ形を現し始める。


ひとだった。
泥色をした人間が霜で真っ白になった畳にせり出してくる。


琵琶を背負った姿から法師のようだった。
能子の顔を見てニタリと笑う。


   「ようやく見つけだぞえ、御子よ、
    いまいましやァ常盤め、やっかいな呪を施しおって。」


これは逢うてはならないもの…。
能子は脳裏にじかに響く暗い声に怖気た。


   「ひひひい、うぬを食らわば永遠の生命が手に入ろう。
    わしと一緒に来りゃれええ。」


法師は腕を差し伸べた。
畳の上を滑るように能子に近づいてくる。


   「あ…ああ…。」


逃げなければならないと思った。
されど、懸命に動かそうとするも身体は言う事をきかない。
とうとう、法師に右腕を捕まれてしまった。


   「さ、来よ。」


法師は能子の身体を引き寄せ始めた。
能子の身体が法師とともに畳に沈んでいく。


   「い…いや…。」


もがこうとするも身体は相変わらず言う事をきいてはくれない。
能子は絶望した。


   「母様…。」


閉じた目の奥に母の姿があった。
いつもと変わらぬやさしい眼差しがこちらを見ている。
と、その母の唇が微かに動いて見えた。


ダ・イ・ジョ・ウ…ブ。


能子は目を見開いた。
彼女の身体は既に半分も畳に沈んでいた。
目の前におぞましい法師の顔があった。


   「わたしは…。」


能子はとっさに自由のきく左腕を見た。
手のひらが眩いくらいに金色に輝いている。


   「うぬのその光はァ!」


あまりの眩さに法師がたじろぐ。
するべき事はわかっていた。
常盤の面影が能子を導いてくれた。


   「ええいっっ!」


持ち上げた左腕を裂帛の気合とともに法師に向かって薙ぐ。
手のひらを覆っていた金色が三日月に弧を描いて走り法師を切り裂いていた。


   「ぅえええェェ…
    お、おのれええ、常盤めえェェ…
    御子にチカラを継いでおったとはああァァ…。」


気がつけば、寝所に月明かりが差し込んでいた。
畳に半分も沈み込んでいた身体も、凍てついた空気も嘘のようにもとに戻っていた。


   「母様、わたしは…
    わたしは何者なのですか?」


目を閉じてみるも、面影の母はやさしい眼差しを向けてくれるだけだった。


…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・


今回の物語のヒント、実はシツレンジャーなのです。
能子が発現させて法師を退かせたチカラって、シツレンジャーの映像のなかでイエローが繰り出しているあの技なのですね。
イエローは能子の末裔であの技は代々受け継がれたチカラという設定です。


なっちさんや、亜弥さんについても書ければいいんですが…。
これについては妄想の神のみぞ知るってところですかねえ…はは。