お点前

わが娘がお茶を振舞ってくれるそうだ。


支度を始めた小さな手が、唐突に流れを止める。
袱紗がないそうだ。
袱紗がないと手順がふめないらしい。


わたしはお茶の世界を知らないが…


作法はとても大事なものではあるが、形式のないものだと思っている。
作法はその時々により振舞うものが決めてよいものだと思っている。
お茶に臨む瞬間の心の在りようが大切なのだと考える。


彼女に袱紗があると定義してやってほしいと話した。
袱紗というプロセスをイメージの世界でやってもらえるように話した。


やはり、それなりの師のもとで習っているだけのことはある。
こだわりが消えた途端、止まっていた流れが息をふきかえした。


彼女は、お茶を点てるという作業に没頭していく。


お茶を点てている瞬間は無心なのだろうと思う。
そうであるべきなのだと感じる。


出来上がったお茶は格別のご馳走となった。