最終楽章

砂の器」の最終回を観ました。
秀夫(中居正広さん)と父親の再会のシーンが泣けました。


   ”わたしは、あなたの息子であることを恨みます…。”


再会できた父親を目の前にして、しぼり出すように、
やっと、口をついて出た言葉は恨み言でした。


   ”三木さんを殺してしまいました…。”


嗚咽しながら語った内容は、
見ず知らずの自分に対して、本当の父親のように接してくれた恩人を
手にかけてしまった悔恨についての懺悔の言葉でした。


秀夫は長い旅をしていたのですね。


幼い日に、自分の境遇に居たたまれなくなって三木巡査の家を飛び出した
あの日にやっと終止符が打たれたのです。


父親と再会するための旅でした。
ずっと演じていた他人から、本当の自分に戻るための旅でした。


初めて心を開くことが出来た親友との死別。
自分を父親に再会させるために現れた三木巡査の殺害。
秀夫が父親に再会するためには、たくさんの代償が必要でした。


宿命。


どうしようもなかった。
生きていくために仕方がなかった。
父親を前にただ咽び泣く事しかできない彼の姿にそれが感じられました。


千代吉はわかっていました。
三木巡査から送られてくる便りから、息子の苦労を察することが出来た
からです。


ただ黙って息子の言葉を聞いていた彼の目尻から涙がこぼれます。
それは、自分のために生き方を歪めてしまった息子への不憫さ、
自分と同じ過ちを犯してしまった息子を思いやる愛でした。


素晴らしい演技でした。
愛を表現するのに、セリフは必要ないのですね。


役者の表情はもとより、
微妙な身体の震え、
ライトの当たり具合、
カメラのカット割りなど、
どんな方法でも愛は表現できるのだと感心させられました。


わたしは、中居さんの「白い影」での演技を観てから、ずっと彼を追って
いる気がします。


SMAPのメンバーとしての彼、
バラエティのMCとしての彼、
そして、俳優としての彼、
意識的に切り替えていると思うのですが、個性が全部違うのですね。


中居さんのことを面白いと感じてます。
彼のこれからにかなり期待しています。