悲劇のヒロイン

ロールパンナちゃん
アニメ「アンパンマン」の登場人物のひとりです。
思えば、「粋娘(をとめ)」をかし。 でアニメのヒロインを取り上げたのは、
初めてですね。


ロールパンナちゃんは、メロンパンナちゃんのお姉ちゃんです。
登場人物が善と悪にはっきり分かれるなか、この娘だけキャラ設定が違います。
善い心と悪い心の両方を持つ女の子。


ジャムおじさんが、良い心のもととなる真心草のエキスを加えて生み出そう
とするも、バイキンマンがバイキンジュースを生地に混ぜてしまったため、
二つの心を持つようになってしまったという経緯があります。


この娘にどうして特別な思い入れがあるのか。
おそらく、登場人物のなかで一番人間に近いからだと思います。


旧約聖書のアダムとイブの比喩なのかもしれませんね。
創世記で、アダムとイブはヘビの甘言にのって「善悪を知る木」の果実を口
にしてしまいます。
ふたりは自我に目覚め、ここから人間の歴史が始まります。


ジャムおじさんが神だとすれば、バイキンマンはヘビ。
メロンパンナちゃんは、善悪の判断がつくようになってしまった人間の位置
づけなのでしょう。


彼女は、バイキンマンに心を操られ敵意をむき出しにしてアンパンマンに向
かっていきます。
すごく可哀想な役どころです。


いい子になりきれない。
自分の事を心配してくれている仲間が本当はたくさんいるのに、それに気が
つかず、自分は孤独だと思っている。
自分の境遇ゆえ、一緒にいようと声をかけてくれるみんなの誘いを断って、
いつもひとりを選んでしまうです。


彼女が幸せになれるのはいつの事でしょう。


近頃のアニメは、幼児向けといえど侮れないものがありますね。
うかうかしていると、泣かされる事になりかねません。
いい物語は、理屈ぬきにいいのですよ。