笑顔

電車の中で亡くなった祖父に似た老人に出会った。
懐かしい笑顔だった。
彼が逝った時も、葬式の席でも、自分は泣けなかった。
祖父でなくなったものに寂しさだけを感じていた。
降り積もった想い出は、心の奥底で富士の万年雪のように消える事はない。
夢の中でもう一度彼に逢う機会を得たのなら、今度こそ自分は泣いてしまうだろうと思った。