初めてのステージ

”中学2年生です、よろしくお願いします。”
愛想がつくれてない、精一杯って感じの挨拶だった。


100回のKISS
彼女に歌われるために生まれた記念すべき曲。
振り付けもなく、懸命に搾り出すように歌っていた。


それが、亜弥さんの初めてのステージ。
彼女が全く出来てなかったと自己評価したもの。


この映像を観るたびに思う。
本当に出来てなかったのかなあって。


思いつめたような表情。
これは亜弥さんの素顔だと思う。
そして、この表情をしている時の彼女は最高に魅力的なのだ。


何の技巧もない「100回のKISS」だった。
それは、とても重く感じられた。
デビューし立ての女の子が歌う歌じゃなかった。
でも…。
彼女の歌声が切なくて胸がいっぱいになった。


市販された時、「100回のKISS」は別物になっていた。
重さがなくなっていたし、歌い方が工夫されてしまっていた。
この曲に技巧は余分だと思ってる。


亜弥さんが自分にダメ出しした理由。
それは緊張のあまり素になってしまったから。


でも、全然ダメじゃなかった。
これを越える「100回のKISS」はもう二度と歌われないと思う。
プロトタイプだったからこそ突出できたのだ。


自分はこの場に立ち会えなかった。
それが無念。


でも、それでも自分は彼女のファンになった。
まるで、運命に導かれるように。