蘇生


唐突におどろおどろしい話をするんですが、死体を蘇生させる方法って意外と難しくないと思うんです。


流派それぞれ儀式に従って神仏にお願いするとか、
稲妻の電流を死体に流してみるとか、
等価交換の原則に則って練成してみるとか、
試験管の中で培養してみるとか、
言い伝えのある墓地に埋めて一日待ってみるとか、
方法はいろいろあると思います。


ただね、どの場合も本当に蘇ってくるわけじゃない、肉体は蘇生されても心は帰ってこないのですね。
蘇って欲しいって願われるようなひとは大抵成仏しちゃってますから、懐かしい外見に入っているのは碌でもない魂となるわけです。
よって必ず大騒ぎになります。


心を蘇生させるにはとんでもない労力がいるんだと思います。
何故難しいのでしょうか。
おそらく心は目に見えないから創造することができないのです。


「A.I」って映画がありました。
愛を入力された人工知能をもつ少年は母親の愛情を求めて彷徨います。
ラストで少年の望みは叶えられるのですが、彼の求めた母親はずっと以前に亡くなっているのです。


おそらく蘇生が行われました。


蘇生には当然死体が必要となります。
母親の肉体のデータ、心のデータ、
そして母親の愛を一身に受けていた場所のデータ、
それは少年の人工知能のものが使用されたと思われます。


そして母親は一日という猶予で戻ってきます。
少年の人工知能に保存されたデータから部屋ごと母親を蘇らすのは一日が精一杯だったのでしょう。
彼女が何も覚えていなかったのは短時間で母親を蘇生させるために不必要なデータが全て取り除かれたためだと思っています。


この映画からわかるように蘇生は技術なのです。
それをやれる技術者が極端に少ないので一般の目からはおどろどろしく感じてしまうのですね。