覚醒
近頃、お馴染みになってきた妄想です。
今回、またまた新キャラ登場となりました、彼のファンからは非難されちゃうかなあ。
ソニンさんが実は誰なのかも明かされることとなりました。
興味のない方は、軽くスルーお願いします。
…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・
どこから来る…。
ソニンは必死に相手の気配を探ろうとしていた。
彼女の右後ろ丁度肩の辺りの空間が揺らぎ始める。
揺らぎがどんどん濃くなり実体化しようとしていた。
男の子だったモノ、まだ幼さの残る顔にはあり得ない大きさの口が付いていた。
感情の宿らない瞳と開かれた口に並ぶ棘状の歯はまるで深海魚を思わせた。
それがソニンの肩に噛りつこうとしている。
ソニンは一瞬にして総毛立った。
身体を捻りながら右足を半歩下げてかわすと肩のあった辺りから敵が飛び出してくる。
思考ではなかった。
目の前を通り過ぎようとする敵を振り上げた拳で叩き落すと同時に捻りにより破壊力の増した右膝頭を敵の頭部に叩き込む。
「キヒイイィ…」
甲高い叫び声をあげながら敵が霧散した。
息があがっていた。
いつもなら亜弥が助けてくれるのだが今日はひとりだった。
敵を察知する能力を身につけなければいつかやられるだろう。
ソニンは自分が歯がゆかった。
不意にポンポンという音が背後で鳴った。
ソニンは慌てて振り返った。
肩までのさらりとした髪と切れ長の瞳、整った相貌の青年が拍手をしている。
年齢は自分と同じくらいだろうか、黒のスーツをさり気なく着こなしている。
彼の後ろには、青年よりもひと回り大きな外国人がいた。
神父なのだろうか黒の司祭服を身につけている。
まるで映画に出てくるような金髪で青い瞳をしたやさしい面持ちの男だった。
「いやあ、お見事でした。」
青年が微笑みを崩さないまま話しかけてきた。
「誰なんですか?」
ソニンは青年の表情に不遜なものを感じて不快になった。
「あれは元気ですか?」
青年はソニンの問いに答えず逆に聞き返した。
「あれって何のことです?」
「あの娘ですよ、亜弥です。
あれは、本来ああいう使い方をするものではないのですがねえ、
いや、宝の持ち腐れです。」
ソニンは苛立った。
亜弥がどうだというのだ、この青年は彼女の何を知っているのだ。
「あなたがしっかりしないから亜弥は大きくなれないのです。
いつまでもこんな事をしていたらとても間に合いませんよ。」
この青年は明らかに自分を侮蔑している。
いったい何者なのだ、何が言いたい。
ソニンの苛立ちが高まっていく。
「ベン、少し見せてあげなさい。」
青年が背後に向かって告げると神父は無言で頷いた。
ソニンには何が起こったかわからなかった。
気がついたら青い瞳が目の前にあって、次の瞬間吹っ飛ばされていた。
辛うじて立ち上がったがまるで自分の身体でないように重い、立っているのがやっとだった。
「どうしたんです?
あなたがいつもやっている闘い方ですよ。
仕方ないですね、じゃあ今度はもう少しゆっくりやってあげなさい。」
再び、青年は神父に指示を出した。
神父の輪郭がぼやける、と思う間に彼はソニンの目の前に現れた。
神父はその勢いのまま蹴りを繰り出す。
今度は見えた。
だが、ソニンには腕を交差させ蹴りをブロックする事しか出来ない、また吹っ飛ばされた。
「つ…強い。」
今度は立ち上がる事が出来なかった。
「情けない。
そんな事だから想い人の命も守れないのですよ、
あの時のようにね。」
朦朧とした意識の中に青年の声が響く。
ソニンの意識が飛んだ。
気がつくと目の前には馬に跨った武将がいた。
決して男前とは言えないがその若者からは優しさが溢れ出していた。
「お供仕ります。」
自分が話している、ソニンは思った。
若者は微笑む。
「巴よお、俺に恥をかかすのかあ。
義仲はおなごの力に頼らねば戦に出られんとよお。」
方便だという事はわかっていた、このひとはそういう男なのだ。
自分が男に生まれたのであればこのひとと共に行けるのに。
胸が苦しくなった、我慢しなければならなかった。
ソニンは泣いていた、涙が止めどもなく溢れていた。
あの時のようにね…。
青年の声が脳裏に響く。
「お…おのれ、義経…。」
ソニンの身体が灼熱と化す、活力が身体を満たし始める。
目を見開いたソニンは立ち上がり青年を見据えた。
「義経えぇ、許さぬぞおぉ。」
ソニンは下腹部の辺りで腕を交差させるとそのまま広げて左腕を青年に向ける。
その拳が白銀に輝き始めた。
「建御雷神の神威よ我が強弓に宿りて怨敵滅したまえ、心願成就。」
右腕を青年に向けた左腕に沿って引く、まるで弓を射るように。
それと共に拳の輝きが最高潮に達する。
「奥義、驟雨!」
極限まで高められた輝きが瞬時に青年の上空に拡散し一気に降り注いだ。
轟音!
だが、そこに青年はいなかった。
ソニンの宣言の直前、彼は神父と共に姿を消していたのだ。
「それでいいのですよ、
あなたはもう亜弥に頼らずとも闘えます。
これからが楽しみになってきましたねえ…。」
立ち尽くすソニンの脳裏に青年の言葉が響いていた。
…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・
どんどん書き込む量が増え始めました。
そろそろ、物語を別の場所に移したほうがいいかなあって思ってます。
やるっきゃないか。
次は誰の話になるのか、乞うご期待です。w