おとぎ話


  ”嫌がらないで下さい、
   今はこのような姿をしていますが、わたしはある国の王子なのです。”
  ”悪い魔法使いに魔法をかけられ…。”


だいたいは人間以外の存在、クマであったり、ヒキガエルであったり、そんなものが少女にお願いをします。
少女はそのものの願いを聞き入れ尽力する。
そしてそれが成就した時、魔法が解け、醜かった姿は凛々しい王子へと変貌する。


外国によくあるおとぎ話です、幼い頃はこのままの意味で受け取っていました。
でも、これって比喩だと思います。


今風に言い換えれば、亜弥さんの楽曲「ダイアリー」の歌詞のよう。


   学園祭で声をかけてきた少年。
   少女は不意の出来事に戸惑いながら、彼と会話してみようと思います。


   少年は毎日彼女に電話しました。
   彼のことを軽薄だと思っていた少女は、彼の誠実さに気づき始めます。
   少女はいつしか彼からの電話を心待ちするようになっていました。


彼のことを軽薄だと思っていた時期、少女には本当の彼が見えていません。
おとぎ話的にいえば、少女には彼のことがヒキガエルに見えているわけです。


彼の心に触れることで、少女の彼についての印象がどんどん変わっていきます。
それでも、彼はヒキガエルのままです。
それは、少女が自分の恋心に気づいていないから。
彼女が自分の気持ちに気づいた時、ヒキガエルは初めて王子になれるのです。


魔法をかけられているのは王子ではなく少女のほう、かけられた魔法は「先入観」、悪い魔法使いは少女自身です。


本末転倒、逆転の発想。
この類のおとぎ話は少女の淡い恋心を描いたラブ・ロマンスなのではないのでしょうか。
ふと、そんな事を思いつきました。