協奏

渡良瀬橋」を歌う亜弥さんの歌声に、オリジナルを歌った千里さんの歌声を重ねてみる。
心の中でそういう作業をしてみた。


亜弥さんがこういった歌を歌う時は、深みというか、たまらない情緒みたいなものを感じる。


彼女の楽曲は様々な音楽番組でバラード風にアレンジされている。
そして、彼女はそれに別の背景を背負って歌い切る。


原曲と全く違う印象を与えられ、さらに原曲を上回るほどの感動を感じてしまうのは彼女の歌声の深みとか、厚みとかそんなもののせいだと思う。


その歌声がヘッドホンを通じて取り込まれてくる。
心の中では、千里さんが同じテンポで歌っている。


千里さんの歌声は甘い。
当時、その甘さが「渡良瀬橋」を無性に切ない楽曲に仕上げていた。


何故、彼女は故郷を捨てられなかったのか。
お互いを想い合ったふたりが何故わかれなければならなかったのか。
今でもその頃の気持ちは全く変わっていないというのに。


亜弥さんはこの曲を仕上げるのにかなり苦労したということが伺える。
それは彼女自身がさまざまな場所で語っていることではあるが、こういった聴き方をするとそれが鮮明に伝わってくる。


亜弥さんが歌う「渡良瀬橋」に違和感は感じなかった。
千里さんとの協奏はみごとに調和して聴こえていた。