ふと気がつくと、彼女の顔が傍らにあった。
瞳のキラキラがはっきりわかるほどだった。


”えっ…”


彼女との距離がさらに近づく。
艶のある下唇に視線が吸い寄せられる。


そして、唇が重なった。
自分はどうする事も出来なかった。


それは、とても柔らかだった。
ただ、唇を触れ合せるだけの幼いくちづけだったが
それが、とても彼女らしい気がした。


ふいにその感触が遠のいた。
彼女が唇を離したのだ。


彼女はうつむいていた。
何かをじっとこらえているようだった。
その口元が少しだけ笑みの方向に持ち上がる。


”ふ、キスしちゃった。”


そうつぶやくと彼女は顔をあげた。
あどけない笑顔がそこにあった。
でも、今日の彼女はいつもと少し違って見えた。


…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・
えーっと、お恥ずかしい話なんですが、
夢をみまして、
大それた事なんですが、
亜弥さんにキスされるんですね。


今迄、アイドルが夢に出てきた事なんて一度もありません。
それが、いきなりこんな夢を…。


もう二度とみる事もないでしょう。


これは日記だし、この夢だけは忘れたくないから、
しっかり書き留めておこうと思いました。