父の海、僕の空

自分の才能を思ったように認めてもらえず未来を見失ってしまった青年。
夢を実現するために父親に買ってもらった大切なギターでさえ、今を生きるために売りに出してしまう。


父親は再婚していた。
青年は彼女を母親として認めたくなかった。


父親はピアノに向かい曲を作っている。
彼は誰に音楽の教えを受ける事もなく独学でそれが出来るようになった。
青年には父親が何故そんなに曲作りに固執するのか理解出来なかった。
自分の生命を削ってまでそれに打ち込む理由がわからなかった。


青年は途方にくれ昔の自分を辿ってみた。
自分が夢を追いかけた場所には、あの頃の仲間が今も夢を追いかけていた。


”彼、とってもギターが上手なのよ。”
久しぶりに逢った彼女はうれしそうにメンバーに青年を紹介する。
青年には彼女が眩しく映った。
そう感じてしまう自分がみじめで彼女につい辛くあたってしまった。


父親の容態が悪化した。
緊急入院した父親の着替えを取りに帰った青年は、偶然来訪した父親の旧友によって全てを知らされる事となる。
父親は亡くなった妻との約束を果たすために作曲を続けていたのだった。


ホスピスは夢を追いかける場所でもある。
残り少ない生命を自分の情熱にぜんぶ注ぐ事ができる。


父親は無心に空の絵を描き続ける少女に在りし日の妻のまぼろしを見た。
少女が描いた空の絵に迷いは見えなかった。
彼女の心がそのまま表れていた。


父親の容態がさらに悪化した。
混濁した意識の中で彼は青年を呼んだ。


”ギターいくらするんだ…”
父親の意識は青年にギターを買ってあげた過去に遡っていた。
彼は青年にお金を握らせ満足そうな顔をして眠りに落ちていった。
偶然だった。
ギターを売ってしまった事を父親は知らないハズだったのだから。


とうとう曲が出来上がった。
青年は父親のために曲の奏者を探す。
ギャラはいくらかかっても自分が働いて支払うと言って。


そして演奏会が実現した。
父親は自分の生命を注ぎ込んで完成させた曲を聴きながら先に逝った妻のもとへ旅立っていく。


青年は売ってしまったギターを買い戻しに出かけた。
父親の愛がたくさん詰まった、くしゃくしゃの紙幣を店員に差し出す。
青年はもう一度やり直す決意をしていた。
父親の夢を、空を描き続けた少女の心を、たくさんの情熱を糧にして。


・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・…・
なんかね、すごく勇気づけられた気がします。


山崎努さんの自分の過去を他人事のように語る口調や、毅然とした態度や、
父親の過去が知れるにつれ彼の情熱にどんどん惹かれていくタッキーの表情や、
遠い目をして空を描き続ける宮崎あおいさんの輝きや、
久しぶりに帰っていた青年を心配そうに見つめるあさみんのやさしさに。


毎年物語を変えて放送されるこのドラマは、自分たちが日常の慌しさにかまけて見失ってしまった何かに気づかせてくれると思うのです。


ただ、自分が思い出したそれを持続させられないのが情けない。
時間が経過するにつれて再び少しずつ忘れていってしまうのです。


自分を変えなきゃな、いつもそう思うのですが。