武士道

太閤記〜サルと呼ばれた男〜」
SMAP草磲剛さん演じる木下藤吉郎の活躍を観ていた。
織田信長役を藤木直人さん、信長の妹であるお市の方役を宮沢りえさんが演じていた。


こういった番組が企画される場合、決まって熟年の名優を起用し、きちんとした構成で
撮影がされる。
民族性が見えないところで作用していて、歴史上の人物を軽く表現する事に抵抗を覚えて
しまうからだろうと思っている。
要するに、無意識ながら日本人はサムライを誇りに思っているのだ。


近頃、時代劇が往年のものに比べかなり変わってきている。
若手がどんどん起用される。
けれど、それは人気取りでなく、きちんと演技ができる若者が人選がされる。


もちろん、年齢が若いので風格なんて感じられない。
往年の時代劇が感性の基準となっているため、かなり不自然に感じてしまう。
けれど、サムライが闊歩していた時代に、当時この国を動かしていたのは、草磲さんぐらいの
年齢のひとだっただろうから決して不自然ではないのだろうな。
なんて思う。


この物語で描かれている秀吉はひとを殺す事をよしと思わない人物である。
戦国の世にもかかわらず、刀を重要視しない秀吉の考え方に動かされた人物が
ひとり、またひとりと彼のもとに集まり始める。


秀吉が信長に認められた理由は何だったろうか。


問題を打開するための発想、工夫、指示された事をやり遂げるための行動力、
人間開拓の手腕、そして戦場から帰ってくるために必須な武運。
そんなものを兼ね備えていたから。
有言実行。
指示した事を必ず成し遂げる男だったから。


信長は、朝倉攻めの途中で同盟を結んでいた浅井長政に裏切られる。
浅井家は、お市の方の嫁ぎ先だ。


番組のなかで触れられてはいなかったが、浅井が裏切ったのには理由がある。
織田、浅井の政略結婚の時に、織田は勝手に朝倉を攻めないという条件が出されて
いたのだが、信長がそれを反故にしたのだった。


信長は、浅井討伐の命を秀吉に出す。
一族郎党、お市の方とその子供も含め殺すよう指示をして。


思うに、
信長は、あえてこの役を秀吉にやらせたのではないのだろうか。
彼は、お市の方を助けたかったのだ。


信長は、立場上、浅井の粛清を指示するしかない。
ほかの家臣にその命を下した場合、信長の威光を恐れ言われた事を従順に実行する可能性が
高かった。
お市の方を殺してしまうだろうということだ。
自分の意を汲んで妹を連れ帰ってくれる人物は秀吉のほかにいないと判断したのだろう。


秀吉は、お市の方との面識も深い。
ひとを殺す事を良しとしない彼の性格ならお市の方を殺す事を思い止まってくれるのでは
ないかという密かな願いがあったのだ。


結果、秀吉は信長の思惑通り動いた事になる。
自分の生き方を偽ることが出来ず、お市の方を殺さず連れ帰ったのだ。
秀吉にしてみれば死を覚悟した行いだった。
主君の命に背くのだから切腹は免れないからだ。


信長は、秀吉の予想に反して行いを咎めなかった。
二度目はないぞ。と言い渡して。
わたしはその言葉を秀吉への感謝の気持ち。
そして、兄の妹への愛情だと感じた。


苛烈なだけでなく秘めた愛情の見え隠れする信長。
百姓のためによい国を作ろうと武士を志した秀吉。
歴史上の人物像よりも俳優のイメージを前面に押し出した設定もたまにはいいものだ。
そう思った。