道程

矢口真里のエッセイ「おいら」を完読した。
世間的には時代遅れな話題なのだが、自分なりに感じたことをまとめてみる。


まりっぺ
本人はヤグチと呼ばれたほうがしっくりくるそうなので、わたしも以降そう呼ぶ事にする。
が、さすがに呼び捨てはいやなので矢口さんと呼ぶ事に決める。


「おいら」を読んでわかった事。

   1.矢口真里にとって仕事とは。
      「初対面のひとにも自分のことをちゃんと言葉で説明できなきゃいけない仕事」
      本文の引用だが、率直でなおかつ、的を得た表現だと思った。
      自分がどんな人間なのか第三者に説明できるか。
      わたしは出来ない。
      胸を張って言える事ではない。恥ずべき事かもしれない。
      しかし、自分はどんな人間なのか考えても明確に言葉にする事ができないのだ。
      そもそも、自分の仕事について述べよと言われて、この表現は浮かんでこない。
      かなり立派である。


   2.初代マネージャーが伝えたかった事。
      和田薫
      ソニンのマネージャーであり、ハーモニープロの現代表取締役でもある。
      彼の指導方法はスパルタ。
      自分が担当したタレントを叱って延ばすタイプの人間である。
      彼がモーニング娘。のマネージャーを担当していた頃、テレビ収録後にメンバーを残し、
      ひとり一人に収録で自分のうまく出来なかった箇所を聞いたそうである。
      表面的に捕らえれば説教でしかない。
      けれど、和田マネが彼女たちに伝えたかった事は流されないこと。
      自己観察する事で自分の足りない部分を認識し弱点を克服していってほしいという
      親心であったと思われる。
      現在のモーニング娘。を見れば、その思いは間違いなく彼女たちのなかで息づいて
      いるであろう。


   3.楽曲のパート割りの秘密。
      モーニング娘。のレコーディング方法は、全員が全てのパートを歌って、それぞれの
      パートの一番いい出来のひとを使っていくそうである。
      この方法であれば、楽曲を表現するうえで最高の人選がされていく事になる。
      理論的であり、合理的である。
      さらに相乗効果として、メンバー間の意識向上がある。
      つまり、うまく歌えないと良いパートがもらえないわけで、メンバーそれぞれが
      切磋琢磨しあう事になる。
      新期メンバーが増える毎にモーニング娘。の実力が向上していった理由はこれで
      あったと思われる。


矢口真里のエッセイの書き方は読んでいてとても気持ちのいいものだった。
自分のエッセイであれば、自分ひとりの話題で終始してもよいものなのだが、彼女の場合、
その殆ど半分を仲間たちへの想いで割いている。
自分の尊敬する先輩方や、愛すべき後輩たち。
仲間のいいところや、もう少し頑張ってほしいところなど、自分の感じたままに書き綴っていた。
彼女がそうしてくれた事によって、矢口真里のみならず他のメンバーの隠れた魅力をも認識することが出来た。
とても有難かった。


最後にひとこと。


矢口真里タンポポ卒業コンサートで会場いっぱいに咲いたタンポポの華。
わたしはその場にいなかったのだが、彼女のエッセイからその情景がありありと浮かんできた。
感動のあまり涙ぐんでしまった。


「おいら」は自分が期待した通りのエッセイだった。